―成田空港―

ガヤガヤ・・・
たくさんの人が集まっている。
そう、今日は私の大好きなあの人がアメリカへ旅立つ日・・・。

桜乃:「リョーマ君・・・。」
『・・・』
リョーマ:「ハァ・・・。アンタ、何て顔してンの・・・」
桜乃:「だってぇ〜(T_T)」
『・・・』
リョーマ:「で?そっちはどうして何もしゃべらないワケ?」
『・・・』

・・・しゃべれるワケないじゃない・・・。
今口を開くときっと涙が止まらない・・・。

リョーマ:「ねぇってば!!」

リョーマはしびれを切らしたのか少し声がキツくなる。

私の肩がビクッと揺れる。

『だって・・・だって・・・うっく・・ひっ・・・』

ついに私は泣き出してしまった。

リョーマ:「えっ!?ちょっ!何!?」

突然泣き出した私に焦るリョーマ。

(だからしゃべりたくなかったのにっ!リョーマのバカぁ!!(>_<))

そんなことを思っていると、ふっと頬に体温を感じた・・・。

ビックリして顔をあげると、私の頬を両手に挟んで真っ直ぐに私の目を見つめるリョーマの整った顔があった。

(顔近すぎ・・・///)
『リ、リョーマ?///』

ふっとリョーマが微笑む。

リョーマ:「泣き止んだね?で?どうして何もしゃべらないし、いきなり泣き出すワケ?」
『・・・リョーマと離れちゃうからに決まってるじゃん・・・しゃべらなかったのは、何か言おうとすると絶対涙が止まらないと思ったの!』

(それに・・・それに・・・)
『・・・それに、リョーマは桜乃チャンが好きなんでしょ・・・?』

それを聞くと、リョーマの大きな瞳が一段と大きくなる。

リョーマ:「ハァ?アンタ、何を根拠に言ってるの?」
『だって、よく一緒にいるじゃん・・・試合の時とか・・・』
リョーマ:「それって、アンタ、俺の試合観に来てたってコト?」
『うん・・・?』

リョーマは手で自分の口を軽く覆い、横を向く。
かすかに顔が赤い。

『?リョーマ?』
リョーマ:「俺、自惚れていいワケ?///」
『ほぇ?』
リョーマ:「〜っ・・・///だから!俺、アンタのコト結構前から好きだったんだけど!///」
『えぇっ!?///』

しばらくの間2人の間に沈黙が流れる。
すると、後ろから桃チャン先輩と英二先輩の声が聞こえてきた。

英二:「熱いにゃぁ(*^m^*)」
桃城:「よっ!御両人!!(*^m^*)」
リョーマ:「げっ・・・煤v

すると、リョーマはいきなり私の腕をつかみ、走り出した。

『えっ!?リョーマ!どこ行くの!?』
リョーマ:「ちょっと!こんなとこじゃゆっくり話できない(-“-)」

リョーマ:「この辺りなら平気かな?」

リョーマは人通りの比較的少ない場所へと私を連れてきた。

『ハァハァハァ・・・』

リョーマのスピードについていけるハズもなく、息を切らし、その場に座り込む。

リョーマ:「まったく、アンタ体力なさすぎ=3」
『そ、そんなこと、ハァハァ・・・言ったって・・・リョーマが体力ありすぎるんだよぉ!(>_<)』
リョーマ:「そぉ?」
『そう!<(`^´)>』
リョーマ:「そんなことよりさ・・・アンタの返事聞かせてくれない?俺、一応告ってるんですけど?」
『う゛っ・・・///』

返事につまっていると、耳の横でトンっと音がした。
リョーマが壁に手をつき、大きなアーモンド形の眼で私を見つめる。

(だから顔近いんだって///ι)
『あ、あのぉ〜リョーマ?ι』
リョーマ:「今更俺のモノになれないなんて言わないよね?」
『え?』
リョーマ:「俺、アンタが俺のコト好きだって確信したからね・・・その証拠に・・・」

そうリョーマが言った瞬間、柔かいものが私の唇に触れた。

リョーマ:「アンタは俺から逃げない。」

試合のときの様な真剣な眼差し。
吸い寄せられる・・・。

『リョーマ・・・』
リョーマ:「ん?」
『私、リョーマのこと大好きv』

そう言った途端、リョーマが優しく抱きしめてくれた。
それだけ・・・ただそれだけで言葉では言い表せないほどの幸せに包まれた・・・。

リョーマ:「・・・ってて。」
『え?』
リョーマ:「必ずプロになってアンタを迎えに帰ってくるから待ってて。」
『うん・・・待ってる。』
リョーマ:「俺、電話とかメールとか苦手だけど、アンタのためなら絶対するからっ!」

私の耳元でそう言うリョーマの声はかすかに震えていた。

『待ってるよ』

私もリョーマを抱きしめた。

搭乗アナウンスが流れた。

一体、どれだけの時間が流れただろう?
10分?5分?いや、もっと短かったかもしれない。
私たちはアナウンスが流れるまで抱きしめあっていた。
しかし、タイムリミットはすぐそこまで迫っていたのだ・・・。

私たちは皆が待っている場所へと戻った。
先輩たちと話している間、リョーマは目を合わせてはくれなかった。

そして、最終の搭乗アナウンスが流れた。
搭乗口へと向かうリョーマ。
背中が段々遠ざかっていく・・・。

『・・・ダ・・・』
桜乃:「どうしたの?」
『ヤダ・・・ヤダよぉっ!リョーマぁっ!!』

その声に驚いて皆が私の方を見る。
リョーマもビックリしたのか振り返る。
でも、今の私には人の目は全く気にならなかった。

『ヒック・・・ごめん・・・ごめんね?リョーマ・・・待ってるなんてウソ・・・。行かないでぇ・・・ック。』

私はそのまま崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。
そう・・・待つなんて出来ない・・・。
それが私のホントの気持ち。

コツコツコツ・・・

(靴の音・・・?)
『?』

不思議に思って顔をあげると、そこには優しく手を差し伸べるリョーマ。

リョーマ:「ホント、アンタって目が離せないね。」
『ごめん・・・(/_;)』

そう言ってリョーマの手を借りて立ち上がる。

リョーマ:「俺だって離れたくないんだからね?言ったでしょ?必ず迎えに来るって。」
『うん・・・わかってる。信じてる・・・信じてるけど・・・。』
リョーマ:「けど?」
『何だか不安なの・・・。』
リョーマ:「まだまだだね。」
『え?』

呆然と間抜けな顔をしている私をよそに、リョーマは荷物を置いて自分の左手首に手をかける。

リョーマ:「こんな場所だからね。コレで我慢して。」

そう言って私の手をとり、いつもリョーマが使っているリスバンドをつけた。

リョーマ:「指輪の代わり。いつか本物あげるから。」
『リョーマ・・・v』
リョーマ:「じゃ、行ってくる。」
『行ってらっしゃい。』

そして、リョーマは自分の夢を果たすためにアメリカへと旅立っていった。

(頑張ってね・・・信じてる・・・。)
『リョーマ・・・。』

私はリョーマを乗せ、青い空を行く飛行機を見上げながらつぶやいた。
リョーマにもらったリストバンドをつけた手首にギュッと力を込めて。




Fin.